unidentified

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凛子の住む閑静な住宅地は山を切り拓いて造られたらしい。 住宅地にひっそりと佇む神社まで緩く続く坂道は、当時の名残の様なものだ。 坂道に沿って、ポツリポツリとある家の一つが自宅にあたり、まだ女子高校生の彼女は、その家で両親と、母方の祖母と住まいを共にしていた。 彼女は幼い頃から何度か、夕方過ぎに帰宅する父からべとべとさんに遭遇したという話を食卓を共にする際に聞いた事がある。 べとべとさんの話題が出る機会こそ極稀だが、その度に父が後ろを憑いて来るので気味が悪いと言うのが印象的だった。 曾祖父の代からこの土地で暮らしている祖母もその話には同意して力強く頷く。忘れた頃に遭遇する為、その都度対処の仕方を父に指南するのがお決まりの流れとなっていた。 そういった噂があるという事に関しては正直な話「イマドキ妖怪なんて・・・・・・」と、凛子は半信半疑だ。 しかし、普段冗談を言わない真面目な父と昔からの地の人間である母と祖母や近所の大人達が口を揃えて言うので、嘘ではないのだろう程度に彼女自身は認識していた。
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