小説家さんと指輪 後編

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「ドキドキするね」  そう言いながら彼の顔が近付いてきて何をされるのかを察して目をつぶると唇に暖かいものが重ねられて、そっと離れる。 「そういえばフミさん、会えない間どういう生活してたの?」 「どうって、いつも通り寝て起きて作業しての繰り返しですよ」 「そっか」  問いかけられた質問に答えると何がうれしいのか彼は笑顔を浮かべて聞き慣れたいつも通りの返事をする。 「大河さんは忙しかったんですよね?」 「起きて寝てレコーディングの繰り返し。よく分かんないけど写真を撮ったりもした」 「何に使うものかも分からないまま写真撮ったんですか」  彼らしいと言えばらしいのだけれど、そんなことでこの先大丈夫なんだろうか。  そう心配していると彼の右手が上着の裾から入ってきて体のラインを撫でる。 「会えない間、自分でした?」 「そんなこと訊いてどうするんですか」 「したんだ?」 「だって、眠れなかったから」  彼の手の動きに合わせて体に甘いしびれが走る。そのせいで会話のほうに集中できなくて、本来なら隠すべきことを白状してしまう。 「するときちゃんと、俺のこと考えてくれた?」 「それは、」 「俺はフミさんのこと考えてたよ」 「そんな、恥ずかしいこと言わないでください」  聞こえてきた言葉に体温が上がってしまうのを感じて彼から目を逸らすと上着をめくられる。 「ごめんね。寂しい思いさせて」 「何で今になって謝るんですか」  体を撫でられながらそう問いかけると彼の手が胸元にのびてきて胸の突起をするりと撫でる。
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