プロローグ ビュンって素早い光

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プロローグ ビュンって素早い光

 意識朦朧としていて、その、唐突ではあるが――  最近揺らぎつつある俺自身の、確認を込めて自己紹介をしたい。  俺の名は、リト。  リト・ハーヴィス。十八歳だ。  この春にサーキュラー市立クイーンズランドハイスクールを卒業し、就職もせず、進学もせず、今年度めでたく無職、あるいは自宅警備という肩書きで新生活が開幕した。  ――ああ、そうそう。ニートとは呼ぶな。  ニートとは本来、働く意思さえない奴のことを指す言葉だからな。その点、俺は違う。ふたつ年下の現役高校生の妹からは蛇蝎の如く罵声を浴びせられたものだが、一方的な物の見方という浅はかさしか感じない。見ているもの、視点そのものが異なると言っていい。働かないのではない。働く気がないわけじゃない。  そう。  俺を働く気にさせる職がない世の中が悪いんだッ!  ――と。  その瞬間、文字通り、脳内の悪魔が囁く。 『冒険者ギルドに通って、魔法使いコースから落第させられた言い訳がそれですかぁ』  うっさい。  人の思考を勝手に読むな。 『そもそもがです、主様。貴方は労働に従事する必要などないはずですよねー?』  あ?  どういうことだよ。     
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