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ぬくもりって、なんですか?
…――私と彼の愛は、ぬくもりを感じられない距離に阻まれてる。
スマホが震える。
作業着の胸ポケットに入っているスマホを手に取る。
彼からの着信だ。
私は小さな部品との格闘を一時中断して首からかけたタオルで額を拭う。寒さと暑さが同居する不可思議な空間に晒され、汗をにじませていたからだ。頬には機械を弄っていた為、オイルでできた汚れが筆で書いた線のよう染みついている。
今し方、電話をかけてきてくれた彼とは幼馴染みで、小学校から高校まで一緒だった。
そして高校生の時に彼から告白されて私は彼と付き合う事となった。
フフフ。
私は彼が告白してきてくれた時の事を思いだした。
彼は真っ赤な顔をして、うつむきながらも必死で『好きなんだ。幼馴染みで終わるのが嫌なんだ。だから僕と付き合って欲しい』と言ってくれた。私も小学校の頃からずっと彼の事が好きだったから、とても嬉しかったのを覚えている。
そうして彼と付き合う事となった。
それから私達はいつも一緒に居た。
いつも彼のぬくもりを近くに感じていて顔がにやけていた。
いつまでも、幸せが続くと信じた。
でも。
「休憩に入ります……」
と母に告げて私は従業員が使う休憩室へと急いだ。
切なさを覚えて……。
彼は高校を卒業と同時に上京した。
東京にある大学へと進学したのだ。
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