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「そう言えばさ、あたし六つ年の離れた弟がいるんだけど」
「ん? うん」
付き合い始めて三ヶ月。初めて彼女が俺の家へ泊まりに来た晩のこと、隣で寝ていた彼女が突然不思議なことを語りだした。
「その弟がね、小学校に入学したばかりのときに気持ち悪い体験をしたの」
「何? 恐い話?」
俺自身、そういう話は嫌いではない。
寝付くまでの良い時間潰しになるかもと思いながら、俺は彼女の方へ顔を向ける。
「恐い……のかな。弟本人が体験したって言うか、その友達の話なんだけど、あのさ、お稲荷様ってあるでしょ?」
「ああ、そんな詳しいわけじゃないけど、狐の神様祀ってる神社だろ?」
「うん。まぁ、正確には狐は神様の使いなんだけどね。当時あたしが住んでた町にはさ、その稲荷神社があったの。全然立派でもなくて、小さいしかなり古い感じの」
モゾリと、身体の位置を調整するように彼女が布団の中で身じろぎするのが伝わってきた。
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