ぬくもりを求める

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 午後六時のドラッグストアは客で賑わっている。駅前という好立地条件のおかげでだいたいこの店には客が多いが、今日はひときわ多い気がする。ポイント三倍キャンペーンのおかげであろうか。  人混みをかきわけ、目当てのカイロのコーナーへ行く。財布の中身を気にしながら、十パックほどカイロを取る。腐るものではないし、ポイント三倍の時に買いだめしておこう。こういう思考は、店の思うつぼなのかもしれないけれど。  レジ前の長蛇の列に並ぶ。時刻は六時過ぎ、買い物を終えて今から自宅へ向かえば、七時に家に着くだろうか。晩ご飯はレトルトのカレーでいいだろう。洗濯も昨日したばかりだからまだたまっていない。後はゆっくりとベルと遊べる。  ベルは私が実家を出る前から飼っている猫の名前である。洒落た名前だとよく言われるが、ごく普通の三毛猫である。私が高校生の頃に飼い始め、就職で実家を出た時、自分のマンションに連れていった。もともと家族に猫好きなのは私だけだったので、連れて出ていくことに両親は何の反対もしなかった。  ベルは今年で十五歳になる。いつ死んでしまってもおかしくない年齢である。
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