ぬくもりを求める

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 大学に入ると普通に友人もでき、サークル活動もはじめたため、家にいる時間は極端に減った。ベルとともに過ごす時間は減ったが、しかし、一日のうちともに過ごす時間を絶対に確保した。就職して一人暮らしを決めたときも、ベルを連れて出ることに迷いはなかった。ベルのいない生活なんて考えられない。考えたくもない。  ドアを開けて、電気をつける。照らされた部屋の隅に、猫用のベッドが置いてある。その中で、ベルが四肢を投げ出して眠っている。  その体は、ひんやりと冷たい。腐臭が鼻をつく。ああ、消臭剤も買ってこなければ。  ベルが鳴き声を上げて、それから動かなくなったのは二日目からだ。体はだんだん冷たくなっていった。いつ死んでしまってもおかしくない年齢だとは獣医からも聞かされていたが。  認めない、絶対に認めない。ベルがもういないなんて。  買ってきたカイロを袋から取り出す。ベルの体にそれらを貼り付ける。あのぬくもりを取り戻したい。あの温かさを。  そうすれば、またきっと一緒に過ごせるだろうから。
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