第3章 別れと始まり

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合鍵で里菜のマンションに入り…… 玄関のドアをガチャンと開けた瞬間 部屋の奥から……里菜の声がもれてきた。 『え………?』 そーっと部屋に近づくたびに それは………里菜の喘ぎ声だと確信に変わる……… ズキッと胸が音をたてた………。 『………り、な』 気が付かなかったけど………玄関には男物の革靴が靴箱の下のスペースに見えないように置かれていた。 『ッ……………』 いつもは電話をしてから里菜のマンションに 向かっていたけど………今日は電話をしていない………。 そうゆうことか……… 確かに……里菜の反対を押しきって転職して そのせいで結婚も伸びて……… 俺には……何も説得力がない。 里菜の声を聴きながら唇をキュッと噛み…… 自分の事が情けなくて……走って里菜のマンションを後にした……。 ハァハァ………呼吸を一生懸命整えて 里菜の部屋を見つめる さよなら、里菜……… ふと、荷物を手に持っていない事に気がつく あれ………鞄……… ………あっ あの時……里菜の部屋に近寄った時に…… 里菜の声を聴いて………気が動転して 廊下に置いたままだ……… あーもうッ………ホント………何してんだよッ……… 財布もスマホも何もかも………鞄の中。 俺はとぼとぼと……… 当てもなく歩き始める……。 里菜との思い出が心を過り 堪らなく切なくなった…… 自然と……目に涙が浮かぶ………。 ……俺が悪いんだ………何もかも………
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