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一度、肩にかけたカーディガンに視線を落としスタンドマイクに向き直る。
目を閉じて、別れたあの日を思い出す。そして、息を吸って、詞に乗せて、感情を、歌う。
好きだと言って、別れてしまった私は弱いね
そんな私に、形見を残した貴女は狡いね
残り香はとっくに消えているのに
今でも私は、未練を抱えたまま……
演奏が已むと、体育館がしいんと静寂に包まれた。
聞こえるのは俺が息を整える音だけ。
「……ありがとうございました」
俺が頭を下げると同時に、拍手と歓声が爆発した。むわっとした熱気が、心地よい。
「ありがとう、ございました」
届いただろうか。この瞬間に立ち会った人達と……彼女に。
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