青紫の

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 通学路、中学校からの帰り道。隣人で幼馴染の俊介とはここ二週間、毎日一緒に帰っていた。  この通学路の途中には急勾配の直線道路がある。登校時は下り坂なのでペダルを漕がずともかなりのスピードに乗せて一気に駆け下りることができるのだが、下校時は疲労に鞭打つ上り坂となって大きく立ちはだかる。立ち漕ぎで一気に上り切らなければ、後は今のように自転車を押しながらゆっくりと歩くしかない。そのため登校時間は十分もかからないのに、下校で坂道を歩くと所要時間は二十分を超える。  俊介との下校は基本、この坂道はゆっくりと歩いて帰る。俊介のスピードに私がついていけないからだ。これまでそんなことを愚痴ることなく当然のように歩いてくれていたのは、彼の優しさだろう。 「昨日、たぶん塾に手袋を忘れて……それで寒くって。ちょっと嫌なことを思い出しちゃったんだ」 「ふうん?」  俊介は続きを促した。くだらない話だよ、と前置きをして私は勢いに任せて語り出す。
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