青紫の

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「この季節になると、その、友達に避けられるの」 「なんで?」 「手が冷たいから」  ふーん、と俊介は相槌を打った。 「橘の手が皆より冷たいんだ?」  うん、と橘こと私が応える。  女子のテンション、というやつなのかもしれない。この時期になると、皆で「寒いね」と言いながらカイロを渡し回したり、互いの手を握って温め合ったりする。私達だけなのだろうか? とにかく、私達はそうして休憩時間を過ごしている。その中でも私の手は異様に冷たくて、冗談のひとつとしてではあるけれども皆が私を、避ける。  私とは対照的に、手が温かい人がいて。皆その人に手を温めてもらって楽しそうだけど、私は触れることを拒まれるのだ。  冷たいから、嫌だと。  私を避けるのは仕方がないことだとは思っている。寒くて温もりを求めているのだ、冷たいものは極力避けようとするはずだ。私だって、自分の指先にはなるべく体に触れないようにするのだ。  だけど私ひとりが拒絶され、そんな私の目の前で皆が互いを温め合っている姿を見るのは、少し寂しい気持ちになる。それが連日のように続きさすがに気が滅入ってきて、末端冷え性なんて良いことないことばかりだと痛感するのだ。
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