第1章 太陽。

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親の愛情を知らない義行に相馬さんは本当の母親のように愛情を注いで育ててくれている。 その事に関しては義行も本当に感謝している。 そもそも今の『太陽』は相馬さんの父親が運営していて、父親が亡くなってからは相馬さんが後を引き継ぐ形で国から任されている状態だ。 まだ30代前半で結婚もせずに自分達の面倒をみてくれているのは本当にありがたかった。 ここで、義行が『太陽』に入所することになった経緯を少し話しておこう。 義行は産まれてからすぐに、乳児院の前に段ボール箱に入れられた状態で放置されていたのを、保護された。今では考えられないが昭和の後期には似たような話が結構あったらしい。 義行はそのまま乳児院で保護され、3歳までを過ごし、児童相談所を経由して『太陽』に入所することになった。 義行は物心がついた頃に、 『僕には何で、お父さんとお母さんがいないの?』 と聞いたが、いつも話をはぐらかされて教えてくれなかった。 しかし、相馬さんの父親が亡くなる少し前に義行が『太陽』に入所することになった経緯を聞く事になる。 当時中学一年生の義行にとってはショックな話であったし聞いた事に後悔もしていた。 その頃から義行は非行に走るようになり、似たような境遇で育った翔太とつるみ喧嘩等で警察の御世話になるようになっていた。 そんなある日、相手に喧嘩で、大怪我をさせてしまい傷害事件で逮捕されることになってしまう。 その頃中学2年生だった義行は荒れていて、留置所に入れられてからも中で 『もう人生どうなってもいいや』 と呟くようになっていた。 相馬さんが何回か面会に来たが義行は会うことを拒んだ。 収監されてから2週間ほど経ち起訴されることになった義行は、鑑別所に移送された。 移送されてからも反省の色など見せず、同じ部屋の少年と揉めるなど問題ばかり起こしていた。 そんなある日、鑑別所の看守から裁判前に相馬さんとの面会に応じるようにと半強制的に面会することになる。 約1ヶ月ぶりに会う相馬さんはやつれた様子で、とても見ていられなかった。 『ご飯はちゃんと食べてるの?』 義行は返事をしなかった。 『私はね義行、あなた達の事を本当の子供だと思ってる』 『だから、辛いことや悲しくてやりきれないような事があったら、何でも相談してほしかった。』 義行は言葉が出てこなかった。
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