偽不良くんは諦めない

9/18

5507人が本棚に入れています
本棚に追加
/565ページ
この学園は棟がいくつか分かれていて、一般的に使われているのが北、東、南の棟だ。少し離れた西の棟は以前までは使われていたが、ある時を境に旧校舎となってしまった。今では不良が集まる場所であり、ヤリ場でも有名で、一般生徒が立ち入ることはほぼないと考えていいだろう。 あるとしたら、不良かホモかの二択だ。まぁ、それは推測だが。なんと言ったって俺でさえその旧校舎には行ったことがない。不良の巣窟に自ら足を踏み入れるなんてこと断じてない。 俺は2年A組の教室に向かっている途中、肩をぽんっと叩かれ振り返ると山本が「よっ!」と手を上げて笑っていた。カバンもなにも持っていないということは既に教室に行ったということか…。 「昨日は災難だったなー」 「別にそうでもねぇよ。」 きっと山本はあの生徒に色々言われた話のことを言っているのだろうが、俺が災難と言うのもおかしい。話し方は少しキツイが彼は事実を述べていたし、間違っていないと思う。しかしそれを言ってしまえば不良らしさに欠けるというものだ。 「いや、そうでもあると思うぜ。あのこともそうだけどお前の担任、やっちゃんだぞ」 ″やっちゃん″ どこかで聞き覚えのあるその先生は確か1年の時、隣のクラスの担任だった気がする。やっちゃんというあだ名に似合わない風貌だったような… 「やっちゃんのヤ~はヤクザのヤ~」 「あぁ、矢野か…」 確か眼鏡をかけていた矢野は目つきも俺が驚くほどに悪くて、いつも眉間に皺が寄っている。髪は黒く、きちんとセットされていて、スーツは少し着崩している。頬には謎の切り傷が残っていて、どっからどう見てもヤのつく職業をしている人としか思えない。
/565ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5507人が本棚に入れています
本棚に追加