偽不良くんは諦めない

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さすがにクラスもザワザワしてきて、「あいつうんこ漏らしたんじゃねぇの?」「それ言ったら殺されるぞ!!」とひそひそ声が聞こえてきた。 「お゛い゛」 これでもかと言うくらい眉間にしわを寄せた矢野が俺に向かって声を出した瞬間に辺りはしんとして、俺は渋々立ち上がった。 「……高嶋 夏輝。」 それだけ言って座ると、満足したのか矢野は「次」と言って俺の後ろのやつを顎で指した。他の奴が自己紹介をしている間もずっと俺は隣に座っている一ノ瀬 志摩のことで頭がいっぱいだった。 一ノ瀬 志摩 それは中学の時の同級生だった。彼は人とは群れない奴でいつも窓際で読書をしていたイメージがある。というのを知ってるのも、奴は2年の時のクラスメイトだったからだ。ほとんど関わりはなかったものの、いじめられっ子だった俺の名前くらいは知っているだろう。 俺は中学時代の自分から逃げたくて、同級生がいないような県外の高校を選んだのに。どうしてこうなってしまったんだ。 でも、だからと言って一ノ瀬が誰かに言いふらすとは限らない。不幸中の幸いと言ってはなんだが、奴は人と群れるのを好まないらしいからな。 「じゃ、自己紹介も終わったことだし委員決めでもするかァ」 矢野はチョークを取り出し、片方手をポッケに突っ込みながら黒板に各委員会の名前を書いていく。もちろん委員会に属さなくてもいいのだが、もし指名や推薦されてしまった場合、部活が忙しいなどの理由がない限り拒否できない。 「まずはクラス委員からだな。やりたい奴いるか?」 もちろん手なんか挙げる奴はおらず、矢野はめんどくせぇと言うような顔で頭をかいた。
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