偽不良くんは友達がいない

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翌日、俺はいつも通り6時に起きた。今日から通常通りの授業が始まり、弁当もある。それなのに起き上がるのさえ億劫になってしまうのは、昨日のあの件があるからだ。 『君の負け。約束通り君には僕の言うことを聞いてもらうから。』 そう言って去っていった一ノ瀬には傷一つついていなくて、その時やっと余裕そうな表情をしている意味がわかった。 「あーもう…」 髪をボリボリとかいてから重たい体を持ち上げてやっとのことで起きることができた。 勉強を頑張って特待生になり学費の免除を受けてるとはいえ、父親が頑張って働いて稼いだ金で通っている高校だ。こんな喧嘩でついた傷くらいで休んでしまっては申し訳が立たない。 「いたっ…」 洗顔をしていると口の端の傷に染みて、痛くて涙目になる。あとできちんと消毒をしようと思いながら顔をタオルで拭いてキッチンへと向かって手際よく弁当を作る。 「よし。」 ネクタイを締めて、弁当を忘れずに鞄に入れ玄関へと向かう。ローファーを履き、ドアノブに手をかけて立ち止まる。 ″一ノ瀬の言うことを聞く″という条件だったが、奴はどんなことを俺に頼むのだろう。そしてそれはいつまでなのだろう。どちらにせよ今日会ってみないことにはわからない。 俺はドアを開けて、悪魔がいる教室へと戦に向かったのであった。 しかし勇気もなければ、偽不良をやめるわけにもいかない俺は登校時間ギリギリで教室の前に立って、その一歩を踏み出せずにいた。 「おい。またお前か。」 「……」 俺が振り向くとそこには矢野がいて、俺の顔を見るなり顔をギョッとさせてから歪めた。 「喧嘩はそこそこにしろよ。」 せっかくセットした頭をポンと叩いて、先に教室へと入っていってしまい、遅刻にされたくない俺は足早にその背中を追った。
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