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それを見た瞬間、俺はなつのシャツの襟をグイッとめくりあげた。鎖骨まで肌が露わになると、首筋にある赤い印と歯型がはっきりと主張しているのがわかる。
独占欲のあらわれとも言える所有印。見えるところにつけるなんて、なつは自分のものだと周りに見せ付けているとしか思えない。
「なんだよこれ」
思ったよりも低い声が出た。自分でも聞いたことがないくらい、怒気を含んだ声色だった。
「これはっ…ちが……」
必死に弁明しようとするなつ。
これがもし襲われて出来たものでも、同意を得てできたものでも、その首筋に唇を這わせたのだと考えると腹が煮えくり変えりそうだ。
それにキスマークから連想される行為は1つだけ。相手が誰だか知らないが、女の子でも男なら尚更、許せない。
─ ダンッ
「誰にされた?」
隙をついて逃げようとするなつを逃さないように壁に追い詰め、壁に両手をついて逃げ場をなくした。
「や…山本?」
「だから誰って」
無性に苛立ってしまい、なつは何も悪くないはずなのに強い言い方になってしまう。初めて見るであろう俺の態度になつは戸惑った表情を見せた。それはそうだろう。俺だってこんな感情初めてで困惑しているのだから。
「い……り、………ごめん、言えねぇ。」
誰かの名前を言いかけたが少し悩んだ後、申し訳なさそうに眉を下げて謝られた。
「……ムカつく」
「え?」
小さく呟いた言葉はすぐ側にいたなつの耳にも届いていた。
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