偽不良くんは友達がいない

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教室に入ると生徒の視線が一気に向けられて居心地が悪いが、進級して間もないのに不良と思われている俺が傷をつけてきてしまったのだから仕方がない。 これでまた一歩、友達を作るという夢も、平凡に過ごしたいという希望も消えた…。いや、不良になった時点で平凡に過ごすのは不可能か。 自分の席に座ろうと教壇の前を通っていくと、一ノ瀬が視界に映る。どう仕掛けてくるのか反応を窺うが、一ノ瀬はピンと背筋を伸ばして前を見ているだけで俺の方を見ようともしない。 (もしかしたら昨日のことなんて忘れているのかもしれない。いや、もしかしたら夢!?) そんなことはないとズキズキと腹の痣が教えてくれていると、朝のホームルームが終わって授業が始まる。不良の名を持つ俺は机に突っ伏して寝ているフリをして、耳でガッツリ教師の授業の内容を聞く。根は真面目なのである。 「おーい、なつ~!一緒に飯食おうぜー!」 突っ伏していた顔を上げるとドアの前でブンブン手を振っている山本を発見した。山本のことだからもう友達を作っているだろうと思っていたが、アイツも実はボッチなのかもしれない。可哀想な奴だ、と思いつつ腰を上げ、鞄を持つ。 チラリと一ノ瀬に視線をやると、周りに人が集まっていてそれを鬱陶しそうにしていた。この学校であの容姿ときたらそりゃあ周りが黙っていないだろう。 なぜならこの高校は他の男子校に比べ、ホモを容認している。いや、他の学校がどうなのかはよく知らないが、この高校には不自然というほどホモが集まっている…のではないだろうか。 「なつ、友達できたか?」 「………お前こそ。」 「お前と一緒にすんなよなー。俺、人当たりは良いんだよ。」 「なんだ、ボッチじゃねぇのか。」 つまらん。と小さく呟くと少し赤く腫れている頬っぺたをギュッと抓られて、「い゛っ!?」と大声を出してしまった。涙目になりつつ山本を睨むと、爽やかな笑みを向けられた。 解せぬ。
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