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「僕のこと殺す気ですか……」
今日の朝から真顔を極めていた宗方がポロッと本音を漏らしたのは昼休みのことだった。いつものように食堂へ行こうとすると、槙田が来るよりも先に山本が俺の元へとやってきた。
「宗方って面白いな」
「お…おおお、おっ……推しがっ…推しが僕の名前を呼んで………っ!!しかも推しカプが目の前に……くっ……ここはもしや天国…」
朝のHR前、珍しく山本がクラスにやってきてから宗方の様子がおかしいとは思っていたが、そこまで山本のファンだったとは。早く紹介してあげれば良かった。
「いっちのせせんぱぁ〜い!……って、またいないし。」
キャピるんるんでやってきた槙田は一ノ瀬がいないことがわかるとスッと表情を変えた。
「……なんか増えてる」
「槙田…だよな?俺、山本 奏太。よろしく!」
「槙田 悠里です。ヨロシクオネガイシマス。」
山本を見るなり、ウゲッと露骨に嫌そうな顔をする槙田。この先輩にも物怖じしない棒読みスタイルはとても真似できたものじゃない。
そんな槙田に対し山本は爽やかな笑みを浮かべ、大人の対応をしていた。
「食堂行くか。」
俺の席の周りにに集まってくれていた皆んなに声を掛ける。
憧れていた光景、望んでいた日常がここにはあった。そう思うたび偽りの自分のことが頭にチラついて、後ろめたい気持ちでいっぱいになる。
容姿も話し方も、ありのままの自分を曝け出したらこの人達はどんな顔をするのだろうか。
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