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「でも付き合い長い親友のくせに俺の名前恥ずかしがって呼んでくれねぇの」
「…別に恥ずかしがってるわけじゃ」
宗方に話して最後に唇を尖らすと俺の方をチラッと見てくる山本。一年も山本呼びだったから今更名前呼びっていうのもなんかムズムズする。
「じゃあ呼んでくれよ」
出会って間もない凪のことも名前で呼べているし、今の俺ならできる。友人から親友へと無事に昇格もしたことだし、そろそろ頃合いなのかもしれない。
「そ……」
「なつ」
「そう…」
「なーつ」
ミジンコ並の勇気を振り絞って呼ぼうとするが、声帯はおろか唇すらまともに開いてくれない。注目されている気がして俯くと、先を促すように山本に名前を呼ばれる。
「そ、そうた」
「んー?聞こえない」
頬杖をついて俺を見やる山本は意地悪気に微笑んでいて、絶対聞こえてただろ!と内心思ったがここで言わなかったらまた恥ずかしがってるとか言って笑うんだ。
「そうた!」
「ん、せいかーい」
恥を忍んで名前を呼ぶと、山本が頬杖をついている反対の手が伸びてきて、セットされた髪が崩れないようやんわり撫でられる。山本の笑い方がいつにも増して甘い気がした。
「なにこのクソ甘いラブコメ…」
「最高じゃないか!!!」
溜息をついて横を向く槙田に対し、ダンッと机を叩いて立ち上がったのは宗方だった。今のどこが最高だったのだろう。
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