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矢野が話す内容をわかっているからか生徒たちの席に着く早さが異常だった。さらには「この中で給食費を盗んだやつは素直に挙手しろ」と言われたときばりの静けさだ。矢野は生徒たちを見渡し、沈黙を破るように口を開いた。
「お前たちが楽しみにしてる体育祭のシークレット競技出場者が決まった。」
「「「うおぉおおおぉお!!」」」
「誰だろう?凪様は入ってるよね!!」
「僕は生徒会が拝めれば何でもいい!」
朝からその話題で持ちきりだった教室内はさらにテンションが上がり、最早カオスだった。なんで他人が出場する競技にそんなに熱が入るのか俺には理解できない。
「一覧は後で配布するが、その前に」
そこで矢野は勿体ぶるように言葉を切った。するとザワザワしていたクラスがまた一気に静まり返る。
「このクラスに出場者が3名いる」
「え?一ノ瀬様と凪様と……あとは、」
「まじか。俺か。俺の時代が来ちゃったか!!」
「それはねぇから安心しろ」
またガヤガヤと盛り上がるこのクラスメイトたちは情緒不安定なのだろうか。チラリと後ろを見てみると宗方も幸せを噛み締めるように喜んでいた。それにしても矢野のツッコミはなかなか辛辣だ。
「一ノ瀬、星乃、そして………高嶋、お前だ。」
「………………はぁ!?」
「「「ええぇえええぇええっっ!?」」」
俺が驚くのと同時でクラスの生徒も叫ぶように驚愕していて、初めて心が一つになった瞬間だった。だって俺が学年で10位以内に入るとかあり得ないだろう。
嘘だったら良いのにという願いを込めて矢野を見上げれば、ニヤリと見つめてきて絶望しかない。これがさっきにやけていた理由だったのか。
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