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帰りのホームルームが終わって教室を出ようとした時、あいつはやってきた。
「たっかしまくーん!」
「げ…」
正面から飛び付くように抱きつかれた俺は後ろに倒れそうになったのをグッと堪える。声の主はふわりと香った少し甘めの大人っぽい香水の匂いでわかった。
「なんでここにいるんだよ…望月」
俺は望月の体をそっと押し返して、凪を背中に隠した。
そう、望月といえば凪にキスをした張本人で生徒会の副会長。一ノ瀬が毛嫌いしている生徒で、俺が望月と関わりを持っていることを知ったお茶会の日、「僕がなんとかする」と言ってから望月が俺に付き纏うことはなくなった…筈だった。
「会いたくなったから来たっていう理由じゃダメ?」
イケメン好きな奴ならこれで即堕ちだろうけど、俺はどちらかというとイケメンは絶滅危惧種になれと願っている人間のため、全く効果がない。
「ちょっと高嶋くん借りてもいい?」
「お前みたいな奴と夏輝を2人っきりにさせるとか無理に決まってるだろ」
俺と一緒にいる宗方と槙田に確認をとるように聞くと、俺の背中にいた凪が登場して拒否をした。因みに山本は部活に行っていていない。
というか、確認をとるならまず本人からだと思う。俺には人権というものがないのだろうか?
「いいでしょ、ちょっとくらい。先っぽだけだからさ」
「そういうところが気色悪い」
望月はいつも飄々としていて何を考えているのかさっぱり分からない。こう見ていると愛想が良さそうだけど、氷のように冷たい一面を持っているのも確かで、なぜこんなに俺を相手にしてくるのかがよくわからない。
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