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一つクッキーを取って口に運ぶ。さっくりとした食感でバターの香りが口の中に広がった。アーモンドが入っているのか香ばしさがアクセントになっている。
「美味しい…」
「本当?」
「嘘つくわけないだろ。こっちも食べていいか?」
俺の表情を覗き込むように聞いてきた望月。俺はどのクッキーを取るか迷って手を彷徨わせていた。
「うっま…これめちゃくちゃうま…………?」
次はしっとりとしたクッキーでチーズ味だった。この美味しさを共感したくて望月の顔をみると、顔を真っ赤にしながら俺の顔を食い入るように見つめていて、俺は首を傾げた。
「いや………えっと、考えてみたら君の笑った顔は初めて見た気がして」
「………笑ってない。」
美味しいものを食べてしまうと顔が緩んでしまうのは小さい頃から変わってない。2人でいるからって油断してしまった。
「実はこれ俺が作ったんだ」
「は……っ?マジかよ」
どこかで買ったものとばかり思っていたが望月がこんな美味しいクッキーを作ったなんて驚きだ。望月が作ったところを想像するとなんだか笑えてくる。
「くくっ……」
「…っ、わ…笑わないでよ。自分でも似合わないことぐらいわかってるんだから。ていうか君だってその見た目で料理上手いって噂で聞いたよ」
「……まぁ。」
顔をムッとさせた望月はやっぱり顔が真っ赤だった。もしかしたらお菓子作りをしていることを知られたから恥ずかしかったのかもしれない。
俺の料理のことを知られていたのは驚きだし、噂になってるのも怖いが、最近は教室で弁当を食べたり山本に手渡したりしていたから知られてしまうのも仕方ない。
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