偽不良くんと体育祭

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『宣誓!私たちはスポーツマンシップにのっとり、正々堂々とたたかうことを誓います!!』 応援団長たちの選手宣誓がグラウンドに響き渡り、眩しい太陽と青空の下で体育祭が始まった。 この学園では赤、白、青の三色に分かれ、優勝を飾るべく争う。赤はA組、F組で白はB組、E組で、青はC組、D組と分かれているため、残念ながら山本とは違うチームになってしまった。しかし今日は負ける気は一切ない。主に個人戦では。 長いジャージをふくらはぎの下ぐらいまでまくって、上着は着ずに体操着のまま参加している。なんて言ったって今日は一ノ瀬の呪縛からおさらばできる日なのだから気合が入っても仕方ないだろう。 「高嶋さん、おはようございます」 「…えーっと、」 「早乙女(さおとめ) 朝陽(あさひ)っす。」 腰を90度に曲げて丁寧に挨拶をしてきたこの男こそが俺の親衛隊隊長だ。190以上はあるだろう身長にドスの効いた低い声、三白眼で眉間には常にしわが寄っている。普通の顔をしていればイケメンの部類に入りそうなものなのだが、近寄り難い空気を放っていているためそちらが目立ってしまう。 その恐ろしい形相にはこの俺もビックリした程だ。初めて会った時は手汗が凄くて、チキンのように震え上がった。 まぁ、この男が俺の親衛隊隊長なのは少し頷ける。キャピキャピ系が来るのかと思っていたから予想外ではあったが、偽不良がバレるのは遠のいただろう。 「すまん、早乙女。どうした?」 「挨拶しにきただけです。高嶋さんのこと応援してるんで、何かあればいつでも呼んで下さい。」 そう言ってはいるが、早乙女の頭に巻かれているハチマキは青色だ。俺は赤組だから応援しないほうがいいと思うのだが。
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