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「ありがとな、気持ちだけ受け取っとく」
「っす。」
お礼を言うと、表情は怖いままなのだがオーラがふわっと柔らかくなって花が周りに飛んでいる気がする。どことなく嬉しそうで、犬の尻尾がブンブン横に揺れている錯覚まで見えた。
俺の目がおかしくなったのかと思って目を擦ってもう一度早乙女を見ると、元に戻っていて、クラスメイトたちが怯えていた。
「じゃあ次、1年の競技なんで見ててください」
そう言って律儀に頭を下げて駆け足で去っていく早乙女。身長が高いと言うのもあってやっぱり一年だというのが信じられないが、彼曰く俺を追ってこの学園に来たと言うのだから相当な努力家と見た。この学園、異常に偏差値高いし。
「ふぅ…なんか早乙女くんって高嶋くんの前だと雰囲気が変わるんだね」
「そうか?……まぁ、一応俺の親衛隊だしな。」
隣に座っていた宗方が胸を抑えながら話しかけてきた。息でも止めていたんだろうか、顔が真っ赤になっている。反対隣では凪がうつらうつらと眠りそうになっていて、頭を引き寄せて肩を貸してやった。
「…ぐふっ………あ、有名なヤクザの跡取りなんでしょ?なんか住む世界が違うよね。背中にすごい刺青があるんだって…なんか格好いい」
「………え……………俺死ぬじゃん」
「…ん?今なんて?」
「…いや、何でもない。」
宗方の発言に素で驚いてしまった。聞き慣れなかった俺の言葉に目を丸くさせる宗方はちょっと可愛くて頰をムニっとつまんだ。
「ふぇ…たかひまくん?」
「ふっ…変な顔」
面白くて微笑むと宗方が茹で蛸のように真っ赤になっていくのがわかって、そんなにつまんだのが痛かったかと頰を優しく撫でておいた。
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