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「あ、槙田くんだ」
「隣は早乙女だな」
今、グラウンドでは1年の短距離走が行われている。応援団たちが自分たちのチームを応援する中、次の出番は槙田と早乙女だった。
『いちについて、よーい……』
パァンッというピストルの合図で一斉に走り出した生徒たちの先頭を行くのは早乙女だった。まず反射速度と歩幅が他の生徒と段違いすぎて、一緒に走っているのが可哀想なほどだ。
「速いな…」
「わぁっ!!すごい、一位だ!!」
早乙女のスピードに思わず拍手していると、遅れて槙田がゴールした。5位中4位という成績を残した槙田は腕で額の汗を拭って、周りにニコッと笑顔のサービスをしていた。あれで腹の内が黒いのだから人間ってのは怖い。
『プログラム3番の借り物競走に参加する生徒は入場門までお越し下さい。繰り返します…─』
「俺たちだな」
「うん!」
俺と宗方が出場する借り物競走のアナウンスが流れた。すぐに行かなければならないのだが、俺の肩ですやすやと夢の中に旅立っている凪の寝顔を見ると起こすのが可哀想になる。長い睫毛を伏せて眠る姿は本当に美少年で、絵になる。
そういえば昨日、凪は寝るのが遅かった。かく言う俺も友だちがたくさんいる体育祭が少し楽しみで昨日の夜は目が冴えてしまっていたのだけれど。
「なぎ……凪…」
「…んーー」
頰を包むように優しくトントンと触れて、耳元で名前を呼ぶと、俺の体温に擦り寄るようにくっついてくる。
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