偽不良くんと体育祭

6/33

5507人が本棚に入れています
本棚に追加
/565ページ
俺はこの学園の借り物競走を甘く見ていた。去年は違う種目に出ていたため覚えていないが、お題の難易度がかなり高い。稀に普通のお題も含まれているが、高確率で俺には借りられない物ばかりだった。 『ゴオオォォォォオオオルッ!!お題は〜?……お、おお!?これは…!なんと″抱かれても良いと思う相手″だぁぁあぁあぁああ!!!』 坊主のマッチョが連れてきたのは小柄で可愛らしい生徒で、俺の目が節穴ではなければ普通逆だと思うのだが。というかその借り物のお題自体がおかしい。プライバシーの保護はどこにいった?おい、そこの2人赤くなってモジモジして良い感じになるな。 『カップル誕生かぁ?お幸せに〜!!』 ………と言った感じで生徒たちは凄く盛り上がっているのだが、俺は悪い予感しかしない。 借り物競走って言ったら眼鏡とか、ハンカチとか…そのお題を引いた誰もが借り物ができるよう配慮してほしいものだ。 『さぁて、次行きますよー!お、人気ランキングに入っている人もチラホラ見られますねー!楽しみだー!いくよー!…よーい、ドン!!』 覚悟を決めて俺は走り出した。机の上に置いてあるたくさんの封筒の中から一つを選び、「普通のきてくれ!」と祈りながら取り出した。 「……どうしよう」 他の生徒がお題を見て観客席へと走り出す中、俺はその場で立ち尽くしてしまっていた。時間制限があるため早く行かなければならないのにそのお題を見た瞬間、ホッとしたと同時に悩み苦しんだ。 ″尊敬する人″ 恋愛系ではないだけ幾分かマシな気がするが…この学園内にいる人と考えるとかなり難しい。 俺の頭に思い浮かんだのは新先輩だ。しかし風紀とは不仲だと演じているため、連れてくることはできない。それならば友人…奏太と宗方は同じ競技だから、出来れば違う人が良い。凪は寝てる可能性大、槙田は普通に断られそうだ。 となると、消去法であの人しかいない。
/565ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5507人が本棚に入れています
本棚に追加