偽不良くんと体育祭

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「ハ、ハハ…お題クリアでーす……高嶋選手1位!!」 マイクを素早く拾った生徒は冷や汗をかいていて少し不憫に思ったが今だけは許してほしい。 ふぅ…と安心しながら1位の列に行こうとすると、進行役が持っていた紙をスッと取る矢野の姿が視界の端に映った。 「なっ…!!」 俺は素早くその紙を奪い取ろうとするが、矢野はヒョイヒョイと俺の手の届かないところへ避けるから全然取ることができない。しかも最終的には腕を上に伸ばす次第だ。俺より5センチくらい背が高いから届かなくて背伸びすると、矢野も背伸びして取れないようにしてきて、面白がっているようにしか思えない。 「くくっ、おもしれぇ。」 「クソ教師」 その矢野の表情と言ったらすごく楽しそうでムッとしていると、矢野は手を伸ばしたままその紙に視線を移した。 「ふぅん…そうか、お前俺のことそんな風に……くくっ」 ヤバいと思ったときにはもう既に内容を見られていて、矢野の笑みが一段と深まった。その瞬間の俺と言ったら、毛穴という毛穴から熱が噴き出しそうなほど全身が熱くなっていた。 見られた、知られた、恥ずかしい、穴に潜りたい、と半パニック状態だ。 「か…返せ!」 ピョンとジャンプしてお題の紙を取った俺はそれをグシャグシャに丸め込んで自分のポケットに突っ込んだ。
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