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それから俺は観客席へと戻ってきたが、借り物競走での失態のせいかかなり視線を感じる。そんな中でもその興味を隠し切れていないのが隣に座っている宗方である。
「そうだ。高嶋くんってそうめん好き?そばで一緒に食べたいなあ…。そのあとは添い寝なんてしちゃったり〜」
目はいつも以上に輝いていて、頰が緩みニヤけていた。よくわからない質問はされたが、真相を聞いてこようとはしなかった。
それから俺と凪は短距離走に出て、ぶっちぎりの1位をとることができた。さっきの失敗をこれで払拭できたと思ったが、現実はそう甘くなく興味の目は付き纏ってきた。
その視線に耐えられず、俺は観客席を立ってフラフラと散歩することにした。しばらく出る競技もないし、気晴らしに丁度良い。
『おおっとここでどんでん返し〜!副会長様が陸上部の生徒を追い抜かしたー!!』
ワァッと歓声が上がってグラウンドを見ると、障害物競走が白熱しており、実況にもかなり熱が入っている。すると颯爽とゴールテープをきって1位を飾る望月の姿が瞳に映った。
(…あ。あいつ………)
あることに気付いてしまったが、副会長である望月に絡んでまた注目されるのも嫌だし目を瞑ることにした。
俺でも気付けるくらいなのだから、望月をよく見ている親衛隊たちだったらもう気付いているはずだ。俺が気にかける必要は全くない。
「………」
(全くないけど………)
悶々と考えているうちに俺の足は自然と救護室へと向いていた。
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