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遮光のカーテンを少し開いて救護室の中をチラッと覗けば1人だけ簡易ベッドに横になっている人がいるだけだった。東先生はどこにいるのか探すと、結局ベッドに寝そべっていたのが先生だった。自分の手を枕にして幸せそうに寝ている。
保健医の先生が暇なのは怪我人がいないということだから喜ばしいことだ。しかしこんなところで寝るのはいかがなものかと思う。(訳:羨ましい)
「湿布もらいまーす……」
起こさないようにそーっと入っていき、湿布がありそうな机の棚に手を伸ばす。それにしてもこんな簡易的な救護室なのにそれを感じさせないクオリティで、さすが金がかかっているだけある。
「……夏輝?」
棚にあるであろう湿布を指差しながら探している時、聞き覚えのある心地良い声が鼓膜を揺らした。
「新さん!」
「そうか。お前は保健委員だったな」
「はい!」
新さんだと分かった瞬間、心が浮き立ったような声になった。嬉しくてつい頰が緩んでしまう。
「ちょっと待ってください…えっと、湿布……」
「何を探してる?」
俺が湿布を探していると新さんが後ろから机に手をついてきた。背中に温もりを感じて新さんに包まれている気分で
「湿布なんですけど」
「これじゃないか?」
そう言って新さんが手を伸ばすものだから、新さんの髪が俺の頸を擽って、俺は思わず首の後ろを両手で覆った。
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