偽不良くんと体育祭

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「え…あ、あ、ありがとう…」 ベンチに腰掛ける望月の背中に回している手を引っ込めようとすると、俺の肩にストンと望月の頭が寄っかかってきた。香水の甘い香りがふわりとして、腕の中にいる望月に自分の匂いもしてしまっているのではないかと何となく思った。 「ねぇ、俺たち周りから見たらどんな風に見えてると思う?」 「……え?」 望月は心なしか顔が赤いが俯いていてあまり表情は見えない。 質問の意図がわからないが、俺はこの状況をじっくり考えてみることにした。訳もわからず肩に寄り掛かられているこの体勢、あの時によく似ている。 「電車で眠って寄りかかる奴と、寄り掛かられて迷惑だけど起こすのもなんか…って思ってる奴。」 「へ?……あははっ!期待してた答えとだいぶズレてるなぁ」 何を期待していたのかは分からないが、お腹を抱えて涙が出るほど笑っている。目の端に溢れた涙を指で拭いながら望月は俺を見やる。 「ほんと君ってば面白い」 「……お前も、そうやって笑ってる方が好きだ」 なぜ笑顔というのは感染するのだろうか。 自然と溢れた笑みを知らず知らずのうちに望月に向けると、望月の顔はリンゴのように真っ赤に染め上がった。
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