偽不良くんと体育祭

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『中に入っている衣装はランダムです。男物もあれば、女物もあります。ゴールした際にはボックス内に書いてあるそのコスプレに合うフレーズを言って完走したことになりますよ〜!』 「うげ、女装とか絶対似合わねぇよ俺…」 隣で奏太がそう言っているがイケメンが女装をすればそこらへんの女子のスッピンには勝てるであろう。だが問題はそこじゃない。俺がその姿になって公衆の面前で醜態を晒すということだ。 『だがしかーし、この競技は早くゴールできれば勝ちというわけではありません。似合っているか、そのコスプレになりきっているか、時間を守れているか、様々な点を考慮して100点満点中で採点しますので、頑張ってくださいね』 なんだこの俺に全然優しくない競技は。ナース服だったりしたら良い晒しものになってしまうし、男物だったとしても似合わなければ点数を稼ぐことはできない。 『では1年生の皆さんから!位置について〜よーーーーい!!ドン!』 「うっ……」 頭を抱えるしかない俺をよそにコスプレ競争という地獄がスタートした。1年の中には槙田もいたが、俺はいまそれどころじゃない。どうすればこの競技を回避できるか考えるだけで精一杯だ。 今更、「出てほしくない」と言った一ノ瀬の表情が頭に浮かぶ。その意図はよくわからなかったが、話をよく聞くべきだったと後悔しかない。 「殿下に指一本でも触れてみろ。お前は死を選択することとなる!!」 『一ノ瀬選手はなんと、騎士様の格好だー!!!台詞もバッチリで満場一致の100点満点!!』 一ノ瀬は鎧を纏い、剣を片手に台詞を恥ずかし気もなく言い放つと、興奮した生徒たちの歓声で大地が揺れた気がした。 『星乃選手はぁああぁなんと!!幼稚園児だぁぁあぁあぁああ!可愛すぎる!!!』 更衣室からムスッとした表情で出てきた凪は黄色い帽子に水色のスモック、ズボンは短く素足を覗かせ白いソックスを履いている。そんな可愛らしい姿に生徒達は無数のフラッシュを浴びせて凪は更に不機嫌になっていた。 (あんなの…っ、あんなの無理だ……!!誰か助けてくれ……!!!)
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