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「あー…もうすぐテストか」
「うん、夏輝は勉強してる?」
「僕は全然…」
1学期が始業して1ヶ月もすれば中間のテストがある。それを1週間後に控えた僕たちは勉強をしておかなければならないのだが、勉強が苦手な僕はなかなか手につかない。
「はあー天音くんみたいに頭が良かったらなあ」
ガクンと頭を落とすと天音くんがそれを見てクスクス笑う。それをジトリと見上げると、首を傾げて天使の笑みを見せる。
「僕は天音くんみたいに頭が良くて格好良くなりたい!」
「なんで?夏輝には夏輝の良いところがあるのに」
「……だって女の子にモテないんだもん」
頰を膨らませてブスッとした顔をしているとプッと天音くんが吹き出して笑った。プチンときた僕は「こんのイケメンがあぁあ!」って肌触りの良い頰を引っ張る。
「夏輝は姫って呼ばれてるもんね」
「それだけじゃないよ…ガリ子とかモヤシって……僕ちゃんと男の子だよね?」
言いながら天音くんの顔を見上げれば視線を逸らされながら苦笑いをしていて、ちょっと傷ついた。
「……でも、モテても良いことなんてないよ」
一頻り笑った後、天音くんは影を落とすように呟いた。嫌味にしか聞こえなかったが、こういったミステリアスなところも素敵だと思ってしまうくらいには天音くんに憧れを抱いていた。
「モテる男は辛いってやつ?」
「ハハ、俺そんなにモテないけどなぁ…」
「僕は女の子だったら天音くんに恋してると思うけど」
こんな会話をするくらいには僕たちの日常は平和的に見えて、数年後自分が偽不良になろうとは微塵も思っていなかった。
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