偽不良くんの過去

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テストも無事終わり、衣替えの季節。 衣替えと言ってもまだ肌寒い日もあり、気温に応じて半袖か長袖を選んでいる。しかし今日は6月というのに外はムシムシしていて、長袖で来るという考えが浮かばないくらいには暑かった。 「おはよー!天音くん!」 「あぁ、おはよう夏輝」 成長期のために少し大きめに買った半袖シャツに袖を通した僕は天音くんを見つけて大きく手を振った。 「あれ、長袖できたの?」 「え?あー…、うん。」 「そういえば天音くんは体育の時もジャージだよね。もしかして天音くんって……」 途中まで言うと天音くんの顔は段々青ざめてきて、僕の口調はそれに合わせてペースダウンしていった。 「さ、寒がり?」 「あ…はは、実はそうなんだよね」 「やっぱりね!今日は暑いもん」 なんて言ってはみたが天音くんの反応はどうもおかしくて心配になった。でも僕に言わないってことは知られたくないってことだから、知らないフリをして笑っておいた。 そう、誰だって人に知られたくないことが一つや二つはある。 「お、姫じゃんおはよー」 「今日も王子サマと登校か?」 「たまには俺たちにも構ってよー夏輝ちゃん」 「…天音くん、行こう」 下品な笑いを向けられ、僕は天音くんの腕を引っ張ってそれを無視した。 ──…入学当初から容姿について馬鹿にされることが多かった。今思えばそれが彼らたちなりの関わり方で、俺がそれを武器に笑いでも取れれば仲良くなれたのかもしれない。 でも、その術を知らなかった俺は天音くんという友達ができて1人で舞い上がっていた。
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