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「あれ、誰もいない」
教室に戻ると中は空でとても静かだった。窓の外はまだバケツをひっくり返したような雨が降っていて、その音に耳を傾けながら自分の席に座って本を開く。
「……今何時だろ」
しばらく集中して読んでいたが雨の音が弱まってきたのに気付き、顔を上げて教室の時計に視線を移した。かなり読んでいたと思っていたがあれから15分ほどしか経っていなかった。
「今のうちにササっと帰ろっと」
結局天音くんも教室には帰ってこなかったし、今のうちに帰らなければまた雨も強くなってしまうかもしれない。僕は本を鞄の中に入れて足早に教室を出た。
「ギャハハ」
「なんだよそれーーー!!!」
(……!この声は…)
階段を降りて下駄箱に向かおうと思っていたが、下から嫌な声が聞こえてきて僕は足を止めた。この声はいつも僕のことを馬鹿にしてくる人達だ。僕は見つからないように遠回りの道を選んでパタパタと駆け出した。
─ ダンッ
いつもは通らない廊下をトボトボ歩いていると、大きな物音が聞こえて僕の体はビクリと跳ね上がった。
「ぐっ…………はっ……ぅ……」
「なんだろう…?」
呻き声のようなものまで聞こえてきて、不審に思った僕は教室の室名札を見上げた。そこには理科準備室と書いてあり、僕の頭の中に嫌な想像が浮かんだ。
(もしかして……おば、おば……おばけ!?)
興味本位で教室の中を覗いた僕は違う意味で目を見開くこととなった。
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