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もうあれからどのくらい経ったのだろう。何時間も経っているような気もするし、あっという間の出来事にも感じられた。体の節々が痛み、起き上がるのもやっとだった。
「あ……」
見渡すとあの4人組はもういなくて、いるのは壁に背を預け体操座りをしている天音くんだけだった。僕は立ち上がってふらふらとした足取りで天音くんに近づき、手を伸ばした。
「あまねく……」
「触んな」
「え……天音、くん?」
天音くんの肩に触れようとした右手は天音くんの手によって振り払われた。僕は夢でも見てるのかと思ったけど、体の痛みがこれは現実だと突きつけてくる。
「お前、馬っ鹿じゃねぇの?」
天音くんなのに天音くんじゃない。天音くんはこんな喋り方もしないし、こんな冷たい表情を僕に向けたことはない。天音くんの皮を被った誰かだと思うくらいには僕の頭は混乱していた。
「もう俺に話しかけてくんなよ」
「な、なんで…僕はっ…」
急に立ち上がって扉の方に向かって行ってしまう天音くんの腕を咄嗟に掴むと、天音くんが冷たい眼差しで僕を見下ろした。
「うざい。そう言ってんのがわかんねぇの?」
「…わから、ないよ」
涙ぐみ始める顔で見上げれば、天音くんの瞳が悲しげに揺れた気がした。
「俺はお前が嫌いだ。大っ嫌いだ!!!だからもう俺に関わんな。」
僕を睨みながらそう言った君が泣いたように見えたのは、僕がまだ天音くんのことを信じているからなのかな。
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