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翌日から待ち合わせの場所には天音くんの姿がなかった。遅刻ギリギリまで待ってみても来る気配はなくて、僕は1人寂しく学校へと向かった。
外はこんなにも暑いのに僕は腕の痣を隠すために長袖のシャツを着ている。今ならあの時の天音くんの気持ちがわかる。
「あ、天音くん…」
教室に着くと天音くんは席に座っていて、僕が手を上げて名前を呼ぶと、鋭い視線を寄越してからすぐに逸らされた。それは話しかけてくるなと言われているようで、僕は口を閉ざした。
「…っわ、!?」
「おはよォ」
ドアの前に立ち尽くしていると、急に後ろから肩を組まれて心臓が飛び跳ねた。横を見た瞬間、体全身が強張って寒気がした。
リーダー格で鋭い目付きの浅海くん、背も高くガタイが良い広川くん、いつもニコニコ笑って腹の内が見えない湖上くん、体が膨よかでパンチが強烈な小池くん。
いつもは関わりのない4人組が僕を取り囲んだことによって、クラスがざわざわして変な雰囲気になる。それはまるで次のターゲットは僕だとクラスメイトたちに披露しているようだった。
それから地獄の日々が始まった。
「ぐぁッ……」
「おっせぇんだよ!!」
僕が1人なのを良いことに昼は呼び出され購買に買い物という名のパシリをさせられ、何かすこしでも機嫌を損ねれば暴力が降りかかってくる。
もちろんそんな僕と関わり合いたいと思う生徒も、助けてくれる人もいなかった。見て見ぬフリ…そう、イジメは周知の事実だった。それは生徒に限らず教師までもが僕を見捨てたのだ。
親には…恥ずかしくて惨めで知られたくない。片親だし、いじめられてるなんて聞いたらすごく心配するに決まってる。自分の子どもがいじめられているなんて、なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいなんだ。
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