偽不良くんの過去

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ある日のことだった。 僕はいつもと同じような日を過ごしていた。朝くれば机は落書きされていて、ひそひそと陰口を言って笑われる。そんな日々を。 いつも通り昼休みに4人のパンを買ってきた帰り、なんだか教室が変な雰囲気になっていることに気づいて僕はそっと教室を覗いた。 「お前たちそんなことして恥ずかしくないわけ?」 「ぁあ゛??ンだよ、テメェには関係ねぇだろ」 「中学生のくせにダッサ。買い物も自分でできないんだ?」 「黙って聞いてればなんだよ!!!」 「へぇ…暴力でしか解決できないなんて動物以下だね」 浅海くんが誰かの胸ぐらを掴んで拳を振り上げた。僕はその光景を見て、ゴクリと唾を飲み込んだ。浅海くんはその言葉にピタリと動きを止めて、その生徒を突き飛ばした。 (一ノ瀬くん…………と、天音くん?) どうやらあの4人と一ノ瀬くんが何やら言い争いをして突き飛ばされたようなのだが、近くで天音君が頰を押さえ座り込んでいた。どういう経緯でそんなことになったのかはわからないが、僕のイジメについて話しているようだ。 「つか、コイツらだけじゃなくてこのクラスみんなが共犯だから。自分は何もしてないとか思ってる奴、反吐が出る」 一ノ瀬くんがそう言い放つと、生徒たちは一斉に目を逸らす。 「いい度胸してるじゃねぇか」 「動物でも何でもいいからやっちまおうぜ」 そうだ、あの4人はそういう人達だ。むしろこういう反感を楽しんで、次のターゲットを一ノ瀬くんに変えてしまうような人達なんだ。 そうしてしまえば、声を掛けてくれた一ノ瀬くんは僕のように傷付いて、涙を流して、心を閉ざしてしまうかもしれない。 「そんなの……そんなの絶対だめだ……!」 僕は気付けば床に落ちたパンなんか気にもせず、駆け出していた。
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