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そんな出会いから2.3日した日のこと。
僕はあの青年の言葉が忘れられず、また懲りずに裏道へとやってきていた。だが、何回挑戦してみても結果は同じだった。
「う、ぁ゛っ……」
「おら、早く立てよ」
「喧嘩売ってきた割には弱くね?」
地面を這いずり、助けを求めるかのように手を伸ばしたその時、ちょうど通りかかった人とパチリと目が合ってしまった。するとその人は立ち止まって、一瞬視線を逸らされ溜息を1つ。
(そりゃ助けてくれないよな。)
涙がにじんできて、我慢しようと唇を噛んでいると誰かの声が僕の鼓膜を揺らした。
「何をしている」
その声は芯が通っていて、スッと耳に入ってきた。頭をあげれば、モデルのようなスタイルに整った顔の見覚えのある青年だった。
まさか来てくれるなんて思っていなくて目を見開いていると、喧嘩相手が隣に座り込み僕の腕を持ち上げてきた。力が入らない僕は抵抗もできず、されるがままになっていた。
「なんだよお前。コイツの友達?」
「言っておくけど、喧嘩売ってきたのはこのおちびちゃんからだからな!ギャハハ」
「そうだとしても、この状況は見逃せない。」
まさかあの青年にまた会えるなんて思っていなかった。こんな僕を見捨てずに助けてくれるなんて思っていなかった。
「じゃあお前が相手になんのかよ」
「手加減はできないが、いいのか?」
「上等だァ!!!」
その勝負はあっという間だった。
3人もの動きを見切って華麗に躱し、すかさず反撃に出て全く隙が見当たらなかった。
「……立てるか?」
瞬きしか出来ない僕に手を差し伸べてきたのは紛れもなくあの青年だった。気づけば僕は瞳から涙が溢れ出していた。
「うっ……うぅ…」
「…っ、な…どうした?どこが痛いんだ?」
助けを求めれば助けてくれる。手を差し伸べてくれる。この光景をどれほど待ち望んだのだろうか。求めた場所は違くとも、この出来事は僕にとって忘れ難いものとなった。
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