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「……ぷっ……くっ…ははっ」
なにが面白かったのか、新さんは俺の姿を見て腹を抱えて笑っている。俺はキョトンとしながら新さんが大笑いする姿を見つめていた。新さんがあんな笑う姿なんて稀にしか見られないから結構レアだ。
「笑うなんて酷いですよ。新さんが悪いのに…」
「すまない。あまりにも愛くるしくてな」
ブツブツ文句言う俺に対し新さんは目の端の涙を指で拭いながら微笑んだ。その笑みは普段鬼の風紀委員長と言われる人とは程遠いくらいに甘く優しくて不覚にもときめいてしまった。
「とにかく!こんなことしないでくださいね!!」
「それは無理な願いだな。」
照れを隠すように強く言うと、新さんは立ち上がって俺の正面に立った。また何かされるのではないかと警戒する俺の頭に優しく手を置いて、髪をわしゃわしゃ混ぜるように撫でてくる。
「お前を甘やかすのは半分趣味のようなものだ」
ならもう半分は何なのか問いたいところだが、それを聞いたところでまた俺が不利な状況になるに違いない。それならばと口を噤んだら、俺の顔を見下ろし「合格だ」と言わんばかりの表情で頷いた。
「俺に怒るぐらいの元気が残ってるなら大丈夫だな」
「えっ…」
もう最初から最後まで何もかもこの人の掌の上で転がされていたのではないかと思ってしまう。それくらいに新さんは俺の気持ちを引き上げるのが上手だ。
「また何かあればすぐに呼べ」
「本当に新さんには敵いませんね…わかりました。ありがとうございます。」
気にかけてくれて嬉しいと思ってしまうのはこんな状況で新さんに失礼だろうか。
「まぁ、お前は1人で考え込む癖があるからな。今回のように夏輝が俺を呼ばなくても俺が行く。」
王子様のような人にこんな姫のような扱いを受けて惚れない女の子がどこにいるのだろう。まぁ俺は男だし、新さんはみんなに平等に優しいから、勘違いはしないけれど。
「頼りにしてます、新さん!」
かくして俺はみんなに偽不良を打ち明けることにしたのだ。
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