偽不良くんの告白

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「なつ」 部屋を出た途端、すぐに声をかけられて俺の背筋がピンッと伸びる。その呼び方をする人は俺の知る限り1人しかいない。そう思いながら振り向くと、いつもの爽やかな印象とは程遠い表情をした奏太が立っていた。 「話がある」 声のトーンもいつもより低くて、近寄りがたい雰囲気に(おのの)きながらも小さく頷いた。 「なつ借りるから。」 凪にそう言うと返事も聞かずに、俺の手首を掴んで引いていく。いつもなら奏太を敵対視している凪なのだが今日はなぜか素直で、俺の手をいとも簡単に解いてしまう。 後ろに振り向くと無表情のまま手をひらひら振る凪がいて少し恨めしい気持ちになった。部屋出て早々に約束を破るなんて聞いていない。 そのまま隣の奏太の部屋に連れ込まれた。心の準備ができていない俺は何から話していいのかわからず、目を泳がせることしかできない。 「えっと……」 奏太の部屋の玄関で2人きりという状況。しかも奏太は黙ったまま俺を見つめてくる。耐えかねた俺はドアノブに触れるが、それより先に手が伸びてきてガチャリと鍵が閉められた。 「逃がさない」 鋭い瞳に射抜かれてしまい、小動物のように怯えてその場から動けなくなった。 「……怒ってる、よな」 「そう見えるか?」 いつも太陽みたいに笑っている人が表情一つ変えないだけでこんなにも怖いと感じてしまうのか。 「まぁ、あんなに会うの拒絶されたしな」 「それは…その………ごめん。」 体育祭が終わった日、土曜日、日曜日も会いにきてくれたらしいが俺は面会拒否。連絡もしてくれたのだが返す言葉がなくて無視してしまったのだ。怒るのも無理ないだろう。 「ん、いーよ」 「え…」 こんなにも簡単に許されるとは思っていなくて俯いた顔を上げると、奏太は優しい表情で微笑んでいた。
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