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「……わかった。」
「うん」
奏太の言葉のおかげで気持ちが幾分かマシになった。相槌を打つ声が優しく耳に響いて、俺はゆっくりと深呼吸をした。
「実は俺、不良じゃなくて…」
「知ってる」
「え?」
覚悟を決めて話し出すと、奏太はあっけらかんとして答えた。予想外の答えに俺は目を丸くした。
「演技しててっ」
「それも知ってる」
「い、い…いつから!!?」
俺は身を乗り出すようにして奏太に顔を近づけると奏太はちょっと苦笑いしながら頭をかいた。
開いた口が塞がらないとはこのことだ。今まで演技していたつもりが実はバレていたなんて。いや、それなら何でみんなは俺を怖がるのだろう。様々な疑問が頭に浮かぶ。
「最初からってわけじゃねぇけど、一年の途中くらいからかな」
「どうして……」
「お前、わかりやすいから。笑顔我慢してたり、結構几帳面だったり、見えないとこで勉強頑張ってたりさ。なんなら家事全般できるし。」
「ぐ……」
思い当たる節がいくつかあって何も言い返せない。しかし、バレていたというショックよりも、そんなところまで見ていてくれたのかという嬉しさが勝ってしまうのが奏太の恐ろしさだ。
「じゃあどうして言ってこなかったんだよ」
「なつから聞きたかったからさ。だから待ってた」
そう言われて、隠していた自分が馬鹿らしく思ってきた。そして俺が話すのを待ってくれていたその優しさに目頭が熱くなった。
すると奏太の手が伸びてきて、俺の髪に触れた。
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