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俺がウルウルしていることに気付くと後頭部に手を置き引き寄せてきて、俺はそのまま奏太の肩に顔をうずめた。
「俺は不良演じてるなつも嫌いじゃなかったよ」
「お前、いい奴だな……」
演じている時の俺も否定しないで受け入れてくれて、なんて心の広い友人を持ったのだろうと感動しズビッと鼻を啜ると、奏太はクスクス笑って肩を揺らした。
「大丈夫、大丈夫」
いつしか俺が奏太にしたようにポンポンと背中を撫でられ、俺は目を閉じてその温もりを感じた。
「子ども扱いするな」
「素直じゃねぇなー、この泣き虫」
「泣いてないし……」
本当の自分を知られても変わらない関係が心地良くて、打ち明けられたからこそ、より一層絆が深まった気がした。こんなことならばもっと早く言えばよかった。
「奏太、」
「ん?」
俺は肩から顔を上げて、ゆっくりと奏太の顔を見上げた。
「ありがと」
「……っ、」
感謝の気持ちを伝えると自然と顔が綻んで、目の端に涙が滲んだ。すると今度は奏太が俺の肩に額を預けてきて、俺は首を傾げた。
「……奏太?」
「やっぱ見せたくねぇなー……」
心の声が漏れたかのような呟きは沈黙の中に消えていく。
「なにを?」
そう聞くと奏太が俺の肩に頭を預けたまま俺の方をパッと向いてきて、俺も奏太の方を見ていたものだから唇が触れ合いそうになって息が止まった。
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