偽不良くんの告白

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「おら、早く来ないと遅刻にすんぞ」 「ちょっ、まだ心の準備が…」 矢野はすれ違いざまに俺の頭を鷲掴みすると、返事も聞かずに教室へと入っていく。こうでもしなければいつまで経っても廊下に居座っていただろう。教室に入れたのはある意味、矢野のおかげかもしれない。 ─ ガラガラ 「お前ら席つけー」 ザワザワとしていた教室が矢野のちょっとダルそうな声によって一気に静まり返っていく。 俺が頭を掴まれたまま顔を上げられずにいると、矢野は俺の頭をノックするように小突いてきた。反射的に顔を上げれば、「ガンバレ」と口パクで伝えられ少しばかり緊張が解けていく。 俺の情けない顔を見た矢野はフッとバカにするように笑った。その笑みは優しさも含んでいて全然矢野らしくなかったけれど、味方がいるということが心強かった。 ─ ガタンッ 大きな音を立てて素早く立ち上がったのは宗方だった。顔を真っ赤にして鼻息まで荒くなり、いつもの表情とはまるで違って興奮しているようだ。やはり俺に怒っているのだろうか。 俺は誰とも目を合わせないようにしながら自分の席に座った。 「今日は全員出席だな。」 矢野はクラス全体を見渡すと満足そうにそう言った。それから連絡事項を伝えていくが、矢野は生徒たちを見るなりため息をついた。 「……てめぇら話全然聞いてなかっただろ?ま、気になるのも無理ねぇか。」 俺はちゃんと定期テストがある話や体育祭委員会が放課後にあることなどちゃんと聞いていた。誰に向けられた言葉なのだろうと少し振り返って周りを見てみると、俺に視線が集まっていて俺は慌てて前に向き直った。 「高嶋は俺のことを尊敬してくれてる可愛い生徒なんだからあんまビビらせんなよ」 「!!!」 恥ずかしいことをクラスメイトにバラされたがこんな状況で大声を出すわけにもいかず、ぐぬぬ…と唸ることしかできない。教卓に頬杖をついている矢野はしてやったり顔をしていて、この状況を完全に面白がっていた。 「そんなことする奴いたらただじゃおかねぇけどな」 かと思えば、急に背筋が凍るほどの低い声に般若のような表情を生徒たちに向けてまるでヤクザのようだった。いや、教師なんだけれども。
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