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「まぁ仲良くやれよー」
矢野はそう言い残すと赤面してプルプル震える俺を残して教室を出て行ってしまった。
どうしてくれるんだ。おかげで教室内は妙な空気だし、教師に媚び売っているぶりっ子野郎だと思われかねない。
「夏輝」
「高嶋くん…」
無数の視線を感じる中、俺の席までやってきたのは凪と宗方だった。いざ眉を下げる宗方を目の前にしてしまうと、言葉が詰まって頭が回らなくなる。
「宗方、あの…」
「君ってやつは…」
宗方の声は震えていた。縁を切られてしまうかもしれない。そう思った途端、耳を塞ぎたくなった。これは嘘をついていた罰なのに、俺が悲しむべきではないのに。それほどに重々しい雰囲気を感じ取っていた。
「もう、最高すぎるよ!!!!」
「えっ」
宗方は俺の机をダンッと両手で叩くと今までに見てことがないくらい生き生きとした表情で話し始める。
「偽チャラ男はよく聞くワードだったけれど、偽ヤンキー?偽不良?まぁどっちでもいいや!とにかくそのギャップが堪らないし、今まで可愛い可愛いって思ってたけど、こんな可愛かったなんて!!体育祭の日のあのコスプレも最高だったよ!!いや、本人に言うのも失礼かもしれないけどみんな高嶋くんの虜だったっていうか!可愛すぎて言葉にならなかったって言うかね!?しかもその時に一ノ瀬くんが拐っていくもんだから付き合ってる噂まで流れてるし、かと思えば今日は矢野先生のあの甘々な笑顔!誰が見たことあるんでしょうね!?いや、無いと思う!いつの間に攻略したんでしょうか?僕的には山本くん推しだったんだけど、もう誰でも結果的には美味しくてさ。1人に絞れないっていうか!あ〜〜聞きたいことが沢山あって何から聞いていいのやら………って高嶋くん?」
宗方は一通り話し終えると俺の顔を見て首を傾げた。俺はというと宗方の勢いに呆気を取られてしまい、ポカンと口を開いていた。
「あっ………」
宗方はやってしまったとばかりに自分の口を押さえて、一瞬で顔を青ざめさせた。
「ハハッ……宗方、喋りすぎ…っくく」
怒られると思っていたのにまさか褒められるなんて誰が想像しただろうか。
緊張の糸が解けて、笑いが堪えきれず吹き出すと今度は宗方の方が俺に呆気をとられていた。
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