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「ふぅ……ごめん、なんかツボに入って」
「いや、僕はいいんだけど周りが…」
目の端の涙を指で拭いながら周りを見ると赤面している人が数人いて、目が合うと素早く顔を逸らされた。眉間に皺を寄せながら視線で宗方に助けを求めると、宗方は急に真顔になって俺を見つめた。
「高嶋くん、無自覚的な要素もあるの?総受けなのか、それともオカン受けなのか、はたまた偽不良受けなのか…あ、もう僕的には高嶋くんは右固定なんだけどね。でもそれ以上萌え要素詰め込むとパンクするよ?主に僕が」
「あ……ごめん?」
宗方の母国語は何を言っているか全く分からず、誰かに通訳してほしいぐらいだったが話の腰を折らないよう謝っておいた。
「……もうこの際だから言うけど僕は腐男子っていって、男同士の恋愛を主食に生きてるんだ」
「ふだんし…」
「そ!BLが枯渇したら死ぬ!!!!」
宗方はいつもよりも声を張っていて表情も明るかった。突然飛び出したワード″BL″。俺は無知すぎてその良さをまだ知らないが、宗方がこんなにも良い顔を見せるのだから素晴らしいものなのだろう。
(なんか、こっちの宗方の方が好きだな…)
「僕にも秘密が1つや2つ…3つや4つ………くらいあるんだから、自分を責めなくていいんだよ。」
「……それ全然フォローになってないし、むしろ墓穴掘ってる」
「え゛ぁ゛っ!?」
凪のツッコミに宗方はまた頭を抱え、ハッと我に返っていた。行動ひとつひとつが見ていて飽きなくて面白い。こんな宗方は初めて見た。
凪はああ言っているけど、宗方の言葉はあったかくて、本当に心からのものだって感じて嬉しかったし、救われた。
「ごほん。でも僕は新境地を開くことができて嬉しいんだ。偽不良万歳。偽不良ありがとう。萌えをありがとう。アーメン」
偽不良を演じていたら、感謝されてしまった。これは全く予想だにしていなかった展開だった。こんなことってあり得るのか?
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