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「こんな可愛いなんて聞いてない!!」
「は?」
槙田の意想外な発言に俺の目は点になってしまった。周りのクラスメイトたちも固まっているのを見る限り、同じ反応をしているのだろう。
「僕の可愛いキャラが薄くなるじゃん」
「え、ちょ…え??」
「まぁ…薄々気付いてたけどさ。」
槙田はそう呟きながら掴んでいた服の襟を離し、シワを伸ばすようにして整えてくれた。状況を飲み込めずにいると、凪がポンと肩に手を置いてきた。
「そういうことだから」
「えぇ!?」
「なつはわかりやすいからなー」
「みんな高嶋くんのことよく見てるんだねぇ。ふふ腐………」
「嘘だろォオォォ」
俺は消え入りそうな声で頭を抱えながら悶えた。この短い期間で何度穴に潜りたくなっただろうか。こんなことならば偽不良だなんて黒歴史のような真似をしなければ良かった。
「バカだねぇセンパイ?」
「ぐっ……」
槙田は俺の腕にギュッと抱きつくと、上目遣いで見上げてニンマリと小悪魔のように笑った。計算されているのはわかっているのに可愛いと思ってしまうのは相手の思う壺なのか。
「本当、参ったよ…」
「僕はバカな方が可愛いと思うけどね」
「俺はお前みたいに可愛くない」
「………ふーん、先輩は僕のこと可愛いって思ってるんだ?」
「ん?まぁ…」
「ふーん………ふふっ」
普通に答えれば槙田は唇に弧を描き、嬉しそうに笑った。そんな槙田の自然な笑顔に目を奪われていれば腕に抱きつく力が強くなって、俺は槙田に引っ張られながら食堂へと向かったのだった。
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