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「高嶋さん、こんにちは。」
「早乙女…」
ハンバーグが来るのを待っていれば、そこに現れたのは俺の親衛隊隊長である早乙女だった。彼は俺に憧れてこの学園に来たくらいなのだから、この姿を見てどう思っただろうか。もしかしたら幻滅して親衛隊を辞めるかもしれない。
「学園生活に支障はないですか?」
「え?あぁ…うん。」
「それなら良かったです。何かあれば呼んでください。近々、高嶋さんと親衛隊たちとのお茶会も予定してるんで皆楽しみにしてます。」
驚くことに早乙女は普段通り接してきてくれた。実は東京湾に沈められることもヒッソリと覚悟していたが、その心配は無用らしい。
「驚かないのか?」
「……?あ……えっと、すごく似合ってます。……すいません、褒めるの慣れてなくて…」
「あ…いや、ありがとう……」
眉を寄せながらちょっと恥ずかしそうに口元を隠す早乙女はその強面の容姿に似合わず、可愛らしく見えた。なんだかこっちが言わせたみたいで申し訳なく思ったが、彼は外見で判断するような人ではないことが分かって見る目が少し変わった。
その後、早乙女のスマホの検索履歴に[ 相手が喜ぶスマートな褒め方 ]が追加されたことを俺が知ることはない。
「失礼します。」
「あっ、早乙女!」
「はい」
「連絡先交換…して、おかないか?」
綺麗なお辞儀をして去って行こうとする早乙女を引き留めながらポケットにあるスマホを取り出した。しかし公衆の面前で恥ずかしいことを口走ってしまったことに気づき、声がどんどん小さくなる。
「あ………早乙女がよかったらだけど……」
俺の発言に驚いて目を見開く早乙女を目の前に、眉を下げヘラリと笑う。その刹那、食堂にいる生徒たちが息を揃えるようにパッとスマホを取り出し、小さな期待を胸に待ち構える。
(僕にもワンチャンあるかも!!)
(早乙女、断れ!!!付き合…突き合うのは俺だ!!!)
(ペロペロしたい………)
彼らの心の声は夏輝に届くことはなかったが言葉を発さずとも、その表情から何となく察しがつく宗方は極度の興奮状態に陥ることになったのだった。
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