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ボフンッと頭から湯気が出てきそうなほど顔をりんごのように真っ赤にさせて瞬きを繰り返す早乙女。そんなに照れられてしまうとこっちまでどうしたら良いかわからなくなってしまう。
「お、お願いします…!!!!!」
震えた手でスマホを取り出し俺に差し出してくる姿は健気なのだが、どうしてもヤクザの弟分のような存在に見えて仕方がない。
連絡先を交換し終えると、早乙女はスマホの画面を見ながら目をキラキラと輝かせていた。
「俺、初めて学校の人で連絡先交換して感動してます。ありがとうございます!」
「ポチ……」
早乙女を見ていたら思わず小さい頃よく遊んだ近所のお兄ちゃんの犬のことを思い出した。こんな柴犬のような子だったなんて、可愛いったらありゃしない。
自分は内面を見てほしいと思いつつ、結局俺も外見ばかりに気を取られてしまっていた。
「ポチ…?」
「あっ、いや…ごめん。大好きだった犬にそっくりだったから」
「高嶋さんの好きなように呼んでください。それに、大好きだった犬なら尚更嬉しいです。」
俺は撫でくり回したい気持ちをグッと抑えて、連絡先に新しく追加された早乙女の名前をポチに変更しておいた。
「うま…!」
嫌な視線に囲まれながら食べる昼食は居心地は悪かったものの、一流コックの飯はやっぱり最高で美味だった。
「ああ、もう至福だな。こんな間近で総受けが見れるなんて……」
「世の中には腐男子受けってやつもあるらしいね」
「槙田くんそれはやめて!!!!」
とにもかくにも俺の生活は大きな打撃を受けることなく終わり、騒がしくも楽しい日常を取り戻すことが出来たのだ。
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