偽不良くんの告白

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授業も終わり、帰りがてらスーパーに寄って買い物をして寮に帰宅した。今日1日のことを振り返り口元が緩むのを感じながら、夕食と一ノ瀬に届けるご飯を作っていく。 一ノ瀬と2人きりで顔を合わせるのはちょっと抵抗あるが、きっとあのキスだって深い意味はなかったはずだ。俺はタッパーに料理を詰めて覚悟を決めた。 「よし……。凪、ちょっと出てくる」 「ん、すぐ帰る?」 「うん。帰ったらご飯にしよう」 「いってらっしゃい」 ソファーでテレビを見ている凪に声をかけると、むくりと起き上がって答えてくれた。凪は運動神経が良いのだから何か部活に入ればいいのにと思いつつも、一緒に過ごせる時間が短くなるのも寂しいから言わないでおいた。 「…押す……押すぞ…1.2の3で……!くっ……」 一ノ瀬の部屋の前に着いてから約5分。俺は未だにインターホンを押せずにいた。 これではなんだか俺が意識しているみたいじゃないか。あれはノーカンだし、犬に噛まれたとでも思っておけばいいんだ。 「何してるの?」 「ひぇっ……!?」 後ろから声が掛かり振り返ると、そこには学校帰りであろう一ノ瀬が立っていた。 「ま、まだ帰ってなかったのか」 「生徒会の仕事。何か用?上がってく?」 別に嫌味ったらしい感じでもなく、一ノ瀬は部屋の鍵をピッと開けながらサラッと聞いてきた。俺はすかさず首を横に振って、紙袋をサッと一ノ瀬に差し出した。 「これ!!届けにきただけだから…」 「……そう。ありがと」 視線を落とし紙袋の中を見た一ノ瀬の表情が曇ったような気がした。
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