腐男子くんはめげない

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宗方 倫太郎side 「……ついに来たか。」 登校して下駄箱を開けた時、僕の第一声がこれだ。高嶋くんが不良じゃないとわかった瞬間からそうなる予感はしていたが、いざなってみると面倒だ。 僕はゴミ箱に入っていたであろうゴミたちを下駄箱の隅に寄せ、水浸しになった上履きを手に取った。 (まぁ、総受けを間近で見れる代償だと思えば全然大丈夫だけど…。) 僕はもう一度上履きを下駄箱に戻してスリッパを借りに職員室へと向かうことにした。靴下のまま廊下を歩いていれば、わざとらしくクスクス笑うチワワ達の姿があった。 (ふふ……君たちは僕の頭の中でたくさん可愛がってあげよう。浮気癖のある彼氏を持つ健気なチワワなんてどうだろう…妄想が捗りそうだ。) ニヤリと笑いかけた僕を不気味に思ったのかチワワ達はパタパタと逃げていった。 イケメンが勢揃いしているこの学園において、平凡な僕の肩身はかなり狭い。今まで僕が彼ら達を羨ましく思うことはあっても、羨ましがられることはなかった。だから妬み嫉みには無縁だったのだ。 「宗方、おはよ」 職員室前に辿り着くと、肩をポンっと叩かれ振り返る。そこには地上に舞い降りた天使がいた。今まで我慢していたのかな?と思うくらいに可愛い笑顔を向けられ、鼻血ブシャァ寸前だ。 「おはよう、高嶋くん。職員室に何か用事?」 「矢野にバッタリ会って拉致された。なんか手紙がたくさんあるから持っていって欲しいって言われてさ」 「愛を育んでいるんだね」 僕がニンマリしながら答えると、高嶋くんはキョトンとして首を傾げた。今日も今日とて推しが尊い…。
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